【暑すぎるといつもなのが余計にになる】
 
 
 
 
「あづ〜〜〜〜〜〜っ」
口をだらしなく半開きにして、舌をだらりとさせている。
四つん這いになっているその姿は、まさに犬そのものだな。まあ、そんな姿も可愛いといえば可愛い。
とりあえず水分はとれよ、と、暑さで溶けきっている背中に声をかけた。
 
 
 
 
久しぶりの二人揃ってのオフ。
 
色々と出かけるプランは立てようと思えば立てられたのだが、今年は“梅雨はどこへ行ったんだ?”
と言うくらいに春からいきなり真夏になったような暑さ。
ついでに電力不足による節電に伴って、我が家もオートエアコンのスイッチは入れないことにした。
なので日中は家の中はうだるような暑さ。湿度もハンパない。
それでなくても留守がちな我が家だ。
家はちゃんと通気をして空気を循環していないと痛む。
壁のクロスがはがれたり、床が歪んできたり、空き家があっという間に廃墟になるのはそういう理由もあるのだ。
 
 
お互い家にいるときは早朝だろうが、夜だろうが、ゆるすかぎり窓を開けて通気をしていた。
それでもどうにもならない時は、香藤のお母さんに来てもらってたりしていた。
 
そうしてやれることをしていても、あっちもこっちもと手入れが必要になる。
と、言うわけで貴重なオフは、ひたすら家の掃除と手入れとなった。
 
当然、香藤はぶうぶうと言ったが、終わったら、うなぎ取ってやるから、と試しに言ってみたら、うなぎ、うなぎ、と俄然、やる気をだした。
お前のやる気スイッチは何なんだ?
 
 
まだ日が昇りきらないうちに俺は庭の手入れを始めた。ここは必ずやっておかなくては!
あまりみっともない状態になると、香藤のお父さんがやって来てしまう。
(帰宅したらお父さんが草取りをしていた時の気まずさといったらハンパない。)
 
その間に香藤は窓という窓を開け放し、手当たり次第にはたきをかけ、掃除機を抱え怒涛のごとく家中を駆け巡っていた。
庭からその様子をポカンと眺め、やっぱりお前のやる気スイッチはどこにあるんだ?と首を傾げた。
 
 
すっきりした庭を眺め満足して家の中に入ってみれば、香藤がへばっていた。
「…あ、あづぃ〜〜 調子に乗りすぎた…」
「どんだけ、やったんだ?」
「掃除機かけたらさ〜床も拭かなくちゃって思って〜」
「ウエットモップがあったろう?」
「買い替えがなかった…」
それで、雑巾がけしたんだよ〜、と、昨日まではタオルと呼ばれていた布っきれを握りしめたまま肩で息をしていた。
買いに行けば良かったんじゃないか?という言葉は可哀想すぎて言えない。
 
とりあえず、水分とれよ、と言い、少し早いが出前でもとるか、と考えていた。
ら、
いきなり香藤が、岩城さん、ごめんね〜〜〜、と誤ってきた。
「どうしたんだ?」
「なんか腰がカクカクで、今夜はいいお仕事ができませ〜〜ん」
「………」
「なんで、岩城さん、がんばってvv」
「………」
「あれ?岩城さん?」
「…つまり、お前は上げ膳、据え膳、ってことか?」
「うんv」
「じゃあ、しなけりゃいい、って選択は?」
「ない!」
 
腰はへろへろだけど、前とは別物だから!と、訳のわからん事を言いだして、
「やっぱりそっちもちゃんと手入れとか使わなくちゃいけないんだよ?」
と、あいかわらず床にへばったまま、当然のように言っている。
 
馬鹿だ、馬鹿だとおもっていたが、やっぱり馬鹿だった。しかも馬鹿さ加減が暑さで2割増しになっている。
なんで、真っ昼間の掃除の最中に、今夜の予定を立てなくちゃいけないんだ?しかもあっちの!
少しイラっとして、冷蔵庫から水を取りだす。
空気を読んだのか、香藤が四つん這いのままザカザカと足元まで這ってきた。そして俺の足首を掴んで
「怒った?」
「呆れた」
「やっぱり頑張ったら、ご褒美ってほしいじゃん?」
「それはお前の褒美だろ?俺には?」
 
うーん、と香藤が唸って、掴んだ足首をひょいっと持ち上げられバランスを崩しながらソファーへと倒れこんだ
「こら!あぶないだろ!」
「ちゃんと見てたから大丈夫」
「そういう問題じゃない!」
持っていたペットボトルで香藤の頭を叩いた。だが柔らかいペットボトルはボスボスと音だけで全然ダメージにはなっていなかった。
 
そのまま香藤がソファーに上って来てにじり寄ってきた。なんか目つきがやばい。
尻をずりながら後ろへ退けた。
「なに、考えてる!?」
「前払い」
「何の!?」
「ご褒美のv」
背中にソファーの側面がついた。これ以上は後ろに下がれない。
 
んーっと口を突き出してきた香藤の顔にペットボトルを擦り付ける。
「前払いはいらん!ってかする気はまったくないぞ!」
「あーふけしゅけはしゅふりょうしふぁのでふぉりけしふぁききふぁふぇん」(あー受け付けは終了したので取り消しはききません)
擦り付けられたペットボトルのせいで、ふがふがと香藤がのたまわった。
両手で香藤の顔が近付くのを防いで、両足で香藤の身体を抑えていたら、背後に回った香藤の手がズボンのウエストをひっ掴んだ。
そのまま、ずるんとずり下げられた。
(ちなみに今日の下はジャージの半パンだ。ウエストはゴムだった。)
 
「うぁ!」
「こら!香藤!やめんか!」
ソファーの背と香藤でぎゅうぎゅうに身体が折れていく。
それから、こともあろうにいつの間にやら出していた香藤のものが尻の割れ目に擦りつけられた。
「なんで勃ってんだ!?」
「ムラムラ〜ってきたからv」
「どこにそんな要素があったんだ!」
「岩城さんが上げ膳、据え膳って言ったあたり」
「岩城さんがあーんな事とか、こーんな事とかしてくれるんだーって思ったらムラムラ〜って」
「しない!しない!しない!」
「…岩城さん…」
「………っ」
「入れていい?」
「やだ」
「先っぽだけ」
「やだ」
「先っぽだけでいいから…」
とんでもなく低い声で耳元で囁いてきた。
 
「…先っぽだけだぞ」
声だけでこっちも火がつきそうだ。でもムカつく。
「…んっ」
少しだけ香藤が入ってきた。汗のせいか驚くほどすんなりと受け入れる。
「…もうちょっとだけ奥に入っていい?」
「…やだ」
「…ねぇ、いいでしょ?」
いつの間にやらペットボトルは床に転がっていた。首筋に香藤の顔が収まる。
聞いてくるくせに、確実に香藤の腰はゆっくり、ゆっくりと進んでいく。
身体に香藤の形を知ら占めるようにゆっくり。
 
「ん…ぁ…」
漸くにして香藤が全部収まっていた。
「…岩城さん…動いていい?」
「…だめ、って言ったら?」
「無理でしょ」
それまで緩やかに動いていたのと、うって変わって香藤の腰が激しく動き出す。
こいつ!腰がカクカクとか言ってなかったか!?
「はっ!あっ!んんんンっ!」
揺すぶられる動作に連動して肺から空気が大きく漏れだす。声が出る。
「…ンっ岩城さんっ 窓、全開だから声、我慢して」
お前がそれを言うかぁぁぁ〜〜〜〜!!!ムカつくやら、身体は熱くなるやらで、色々ぶっとびそうになった。
 
 
 
 
 
 
 
 
「…ぜぃぜぃっ、ぜぃ……っ」
香藤がへばっている。
「…っ岩城さんっ! まだやる所ありますか〜〜っぁ」
「あと階段の拭き掃除と一階の廊下な」
「う…ぇ〜〜〜〜」
あれから、ぶりぶりと説教をして、まだ元気があるなら、と、香藤をこき使っている。
今度こそ本当に腰がへろへろになってもらおう。
 
そこにご褒美があるかは、お前の働き次第だぞ。

 
 
 
『補足』
・今夜のお仕事→ほにゃららら。
・上げ膳・据え膳→香藤君まぐろ状態。
・柔らかいペットボトル→いろ○す。
 
 
 

 

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