【タイミングってずれるとすのが難しい】

 

ワシャワシャと泡だてる音が、浴室に響く。
「痒いところないか?」
「なーい」
目を瞑りながら笑顔で答えた。




誕生日から幾日か経った頃、久しぶりに早く帰ってきた俺に、やっぱり久しぶりに早く帰っていた岩城さんが、
風呂、入れてやる、と玄関で迎えながら言ってきた。

「どしたの?」
いきなりの言葉に俺の頭の中に?マークが3つほど浮かんだ。
や、岩城さんとお風呂に入れるのはもちろん嬉しい!湯船の中で岩城さんを後ろから抱えて、綺麗な項を眺めたり、
振り返った顔の目元がほんのり紅くて壮絶に色っぽかったり、こら、って言われながら岩城さんの身体を撫でたり、あ、考えたらちょっと勃ってきちゃった。

「んー?まあ、遅れたけど誕生日祝いってことで」
先に廊下を歩く岩城さんが、振り返りながらちょっといたずらっぽく笑った。
「誕生日?プレゼント?貰ったけど?」
今年も誕生日プレゼントは貰った。その日の朝のうちに。
先に家に出る岩城さんが、まだ寝ている俺に、おはよう、と、おめでとう、ってキスを落としながら枕元に細長い箱を置いた。
中身は腕時計って知っていた。
誕生日の一カ月ほど前に、岩城さんと二人で選んだもの。
岩城さんが今回買おうとしたものがちょっと値の張る物だったので(店で値段のタグをみて、うぁ!って思った)
一度俺に見せて確認を取りたかったからなんだけど。

もちろん、岩城さんのくれるものならなんでも嬉しいけどね。

一緒にいる年月を重ねていくと、誕生日とか結構慣例化していったりするんだけど、俺たちの場合はそれが出来ない。
毎年、同じレストランで食事をしたりとか、その日は休みを取って家で過ごしたりとか、そんな事がまず出来ない。
下手すれば誕生日だってのに会えなかったり、いつぞやは日本にすらいなかった

しかも今年の岩城さんの誕生日なんか俺は羽田に行く途中に、岩城さんの事務所に寄って行って、金子さんに路駐で待っててもらって、
矢継ぎ早にデスクで仕事している岩城さんにキスをして、おめでとう、って言って、これまた金子さんに取りに行ってもらったプレゼントのネクタイピンを渡して、
またまた金子さんに頼んでいた限定販売!極上ロールケーキを山のように持って行って受付のお姉さんに岩城さんの誕生日だからねv
と渡したり(フツーにこれって差し入れ?)、実にこの間、約15分間。
バッタバタでした。(しかも8割、金子さん頼み)

まあ、気持ちの問題なので。

脱衣場に入ってシャツに手をかけた。岩城さんが振り向いて、香藤、待ってろって言った。
「脱ぐの?」
「ん」
中途半端に止まった手をそのままに、目の前でさくさく服を脱ぐ岩城さんを見ていた。
あっという間に全裸になった岩城さんが、俺のシャツのボタンに手をかけた。
「全部?」
「ん」
どうやら岩城さんは、俺の服を全部脱がせるらしい。しかも鼻歌が出てきそうに上機嫌で。
ベルトをしゅるんって抜いてボタンをはずしてチャックを降ろして一気にジーンズを引き下ろした。俺は前にしゃがみこむ岩城さんの肩につかまって足首を抜いた。
で、しゃがんだままの岩城さんが今度はパンツに指を引っ掛けて、これまた一気に降ろした。
当然、岩城さんの目の前には俺のものがぷるーんって音が出そうな勢いで出た。

うーん、これは結構恥ずかしい。完勃ちってわけじゃないけど、まあ、勃ってるわけで。
これまで数えきれないくらいに岩城さんにはパンツを脱がしてもらったけど、何かそれなりに盛り上がってもいなくて、
まるっきりの日常的なところにぽーんって自分の下半身が晒されてるみたいで恥ずかしい。

これでね、スイッチの入った岩城さんが目の前の俺のものを、ぱくってしてくれれば、それなりに盛り上がっちゃって、
今の恥ずかしさなんか飛んじゃうんだけどね、ぷるるるってしてる俺のものに、にっこりとほほ笑んで、
さっさと立ってスタスタと風呂場に入っちゃってるから後ろからついてく俺は下を向いて、勃ってんじゃないぞ!って自分のものに八つ当たりしてみた。

洗い場に入って、岩城さんがイスを俺の前にずいって出してきた。座れって事らしい。
イスに腰掛けて、岩城さんが、シャワーかけるぞ、って言って、背中にシャワーをかけてきた。
「先に頭な」
「洗ってくれるの?」
「ん」
どうやら、や、確実に岩城さんは風呂に入る過程を全部やるらしい。
そうだった、風呂に一緒に入ろう、とは言ってない。風呂に入れてやる、だった。
何がどうで思いついたのかは解らないけど、見るからに岩城さんは上機嫌なので、これはとことん付き合うしかない。やってもらいましょう!全部。

岩城さんに後ろから頭にお湯をかけられて、ぱちんって音がして、どうやらシャンプーを手のひらにとっているようだった。
ふわって岩城さんの手のひらが頭を包む。最初に軽く手櫛で梳く様に泡を広げていって毛先の方を揉むように手のひらが動く。
それから額の方から指の腹で細かく地肌を擦るようにいって、項の方から同じようにして最後はつむじ辺りを擦っていく。
痒いところないか、と、聞かれて、なーい、と間の抜けた声で返事をした。

綺麗に泡を流してから、岩城さんが、つけるか?とコンディショナーのボトルを振った。
「うーん、今日はいいや」
「そうか」
今度は壁に掛けてあるボディタオルをとってボディソープを付けて泡だてはじめた。

首から項にかけてゆっくり丁寧に擦る。耳の後ろと耳のふちも丁寧に擦ってくれる。
それから背中を少し強めに大きく擦って、腕をとられて後ろを振り向かされた。
んって岩城さんが顎を上げる仕草をした。ああ、顔あげろって事ね。んーって顔上げて首を擦ってもらってたら、岩城さんが、髭、剃るか?って聞いてきた。
「生えてる?」
「でもない」
じゃあ、明日の朝にするって言った。
胸と腕を擦ってもらって、お腹も擦ってもらって、途中でソープを岩城さんが足して、俺の脚をひょいって持ち上げて自分の太腿にのせて、がっしがっしと擦っていった。
膝裏も丹念に擦って、足首とか指の間も一本一本洗ってもらって、しかもそれがすんごく気持ちいい!正直、癖になりそうだった。

「なんかさー」
「ん?」
「王様かお殿様になった気分」
「そうか?」
ははって岩城さんが笑った。
それから、今の王様ってここまで洗ってもらわないよね?とか、昔のお殿様って湯帷子着ながら身体洗ってもらったんだよね、とか、たわいもない話をした。

で、後、洗ってもらってないのが、ここだけなんですが
正直、もう、完璧に完勃ちです。
そりゃあね、マッぱの岩城さんがいたせりつくせりって身体洗ってくれてね、それがものすご〜〜く気持ちいいし、当然、勃つでしょう!そうでなかったら大問題だよ。

岩城さんだって、俺ほどじゃないけど勃ってるし。

泡を手のひらにいっぱいのせて、岩城さんが俺のものに触れてきた。下毛を軽く擦ってそれから袋を両手で揉むようにする。
んっって声が零れる。さおの部分を下から指で輪を作るようにして撫で上げてくる。
そんなに擦る場所でもないから(擦ったら痛いし)泡を撫でつけるようにする。ここいら辺は同じ男って事でツボを得ている。

腰上げろ、って岩城さんが言って、俺の奥まったところに手が伸びる。
するっするって掌を動かしてて、ふっと手が止まった?って思ったら、ぬるんって岩城さんの指がソコに入ってきた。
「うひゃっ」
まぬけな声を出してしまって、力が入って岩城さんの指を締め付けた。ちなみにソコってのはそんなところです。
いやいやいや、洗うってそこまでですか!?そこは普通に洗わない所なんじゃってか、そっちですか?!そっちに用事があるんですか!?岩城さん!!
思わぬ事態でぐるぐるしている間に、岩城さんの指は確実に目的へと動いている。
えっと、岩城さん?そっち?」
一応、確認のため聞いてみる。そしたら岩城さんがにやって笑った。いつもの優しい微笑みとかじゃなくて、なーんか腹に黒いものがあるような、そんなにやり。
 
 

つまりだ!岩城さんは俺を美味しくいただくために、お風呂に入れてぴかぴかに磨いて、しかもそっちの準備までしているってこと?!
何時から??いつから岩城さんってば、スイッチ入っちゃってるのぉぉぉぉ!!!
もちろんね、岩城さんを抱くのも、抱かれるのもどっちも嬉しいんだけどね。ここまでされるがままってどうなんだろ?いいのか?いいのか?俺!?



ぐるん・ぐるんと思考を巡らせている俺を見て、岩城さんが、ぶっと噴き出した。
「くっくっくっあ、っはっはっは」
岩城さん?」
「っくっすまん、香藤」
「ほえ?」
「あんまりお前がされるがままなんで、調子に乗った」
「ええっ!!!」

最初は本当にお風呂に入れてやろう、全部してやろう、って思っていた岩城さんだったけど、なんか俺が、え?え?って感じになってきているものだから、
面白くなってきて、どこまでされるがままなのか、ってしてきたらしい。
いつもの俺だったら服を脱がしたりしたら抱きついてくるかな?とか、身体洗ったりしたら抱きついてくるかな?とか。
何時まで経ってもされるがままだったので、笑いだしたいのをずっと我慢してたらしい。
「ひでっ!」
「ごめん、ごめん」

ついつい可愛くってな、なんて言われれば、怒れないじゃん。
「で、どうする?」
そっちにするか?これともこっちにするか?って岩城さんが自分の腰をするんって撫でた。

ふんって抱きついて、とりあえず岩城さん、洗わせて、と言った。
岩城さんが笑いながら、了解、と、腕を俺の首に絡ませてきた。





その後の事は言えない。

 
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