【後悔ってどうして先にってくれないんだろう】




「う〜〜〜〜………

頭が痛い。
ぐわん・ぐわんと耳の奥でやけに自分の息遣いが響いてる。
おまけに心臓の音と同じリズムでズキズキと痛みがくる。
この痛みの原因はわかっている。

―――――
二日酔い。


もたもたと寝返りを打てば我が家の寝室の天井。
『あ家には戻ってきたんだ』安堵とともに、自分がどうやってここに行きついたのかが記憶にない。
確か昨日は小野塚たちと呑んでいて、自分でも結構なペースで酒をあおっていた自覚はある。途中でずいぶんと度数のある酒が出てきて、
調子に乗って飲み比べをはじめたような

枕元を探れば自分の携帯があった。
とりあえず、飛んだ記憶を探ろうと小野塚に電話をする。

呼び出し音を聞きながら、『岩城さん、今日はどんな予定だっけ?』と、空になっている隣のベッドを見つめていた。

………はい……
あ〜、小野塚?」
とてつもなく不機嫌な声に遠慮がちに声を出した。少し掠れていた。
なんだ?」
「あれさ〜〜俺、昨日の途中から覚えてないんだけど
だろうな
「とりあえず、家で寝てんだけど
「ああ、岩城さんに迎えに来てもらったから

げ、と思いつつ、もう一度空になったベットを見つめた。
「なんかさ俺、やらかした?」
…………
沈黙がこわい。何かやらかしたらしい。
でも、まあ小野塚ならいっか、と思いつつ軽い調子で、ごめん、と誤った。
「俺に謝る前に、岩城さんに謝ったほうがいんじゃね?」
一気に血の気が引いた。
それは反則だろう?なんでそこで岩城さん?やっちゃったのか?やっちゃったのか?俺!?
何をやらかしたんだ
声が少し上ずる。
「教えない」
ぶつりと電話が切れた。
慌ててかけ直すがおかけになった電話番号は現在電源が切れて…”とお決まりのメッセージが流れた。
「あっんのやろう!」
むきーっと携帯をシーツに投げつける。

他に飲んでいたメンバーを頭の中で思い出していた。
ら、
「起きたか?」
と、寝室のドアが開いて、岩城さんが顔を覗かせた。

きゃーっ、と、心の中で叫んでベッドの上に正座した。
「あ、あの岩城さん?」
「ん?」
「俺、昨日のこと、覚えてないんだけど迎えに来てくれたの?」
「ああ電話をもらってな。香藤がべろん・べろんだから都合ついたら来てほしいって」
うっ」
「ちょうど仕事が終わったから家に戻って車出して、迎えに行った」
そうですかありがとうございます」

「で、ですね
「ん?」
「俺は何かまずい事をしたでしょうか?」
…………
い〜〜〜やぁ〜〜〜〜〜っぁ、何かその沈黙が怖いんだってば!!
「聞きたいか?」
「うん!!!」
「教えない」
ベッドに腰かけていた岩城さんが、すくっと立って、反省しろ、とスタスタ寝室から出て行ってしまった。
そのまま、階段下から、行ってくる、声が聞こえて玄関の閉まる音がした。


それから俺は脱兎のごとく、ベッドから飛び降りてシャワーを水のまま頭からかぶり、タオルを頭にのせたまま車に乗りこんで、
小野塚の家に行き、マンションのエントランスでインターフォン越しに小野塚が『A○B、歌ったら入れてやる』と言われたので、
あいに〜ちゅう〜〜〜、あいうおんちゅ〜〜〜と歌った。
もしかしたら明日の新聞の見出しに香藤洋二ご乱心!?マンションのエントランスでA○Bを歌う!?と出るかもしれない。社長に殺されるかもしれない。
でもそんな事より、岩城さんに何をしでかしたのか?の方が重要なのだ!


「じゃあ、教えてやろう」
涙をぬぐい、脇腹を押えて小野塚が、死にそう、と言いながら、昨日の出来事を話し始めた。




15分後。
たぶん俺は先ほどの二日酔いの顔より真っ青な顔をしていると思う。
………マジ?」
「マジ」
まあ、離婚って事はないだろうけど、後は自分でどうにかすれば?他人ごとなので小野塚は軽く言っている。
俺は床をゴロゴロしだして、
「あ〜〜〜〜〜〜っ!!!時間巻き戻して〜〜〜」
「無理だろ」
「ありえね〜〜〜〜〜」
「あり、だから」
「ドラも〜〜〜〜ンっ」
「いねえし」
騒ぐ俺に、小野塚のわんこがきゃんきゃんと吠えた。
当然、俺はこののち禁酒を誓ったのは言うまでもない。





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